糖尿病ケアのための医学知識

ストレスと糖尿病

医師 春里

3月11日に東日本大震災が発生しました。

震源地より遠く離れた大阪市にある当院でも感じることができるほどの地震であったことを考えると、震源地に近い方々を襲った威力は測り知れません。
多くの大切な命が失われたことに哀悼の意を捧げるとともに、被災された皆様、またその家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

そして、被災された糖尿病患者の皆様で主治医と連絡がとれなくなっていらっしゃる方のために、糖尿病学会のホームページに診療を継続している医療機関の情報やインスリンメーカーの連絡先が載っています。インスリン治療中等でお困りの糖尿病患者の皆様は、計画停電の影響もあり情報の確認も困難かもしれませんが、できるだけお近くの医療機関にご連絡下さい。

日常診療中に患者さんに「ストレスで血糖値は悪くなりますか?」と質問を受けることがしばしばあります。
阪神淡路大震災の際には食料や定期薬の入手が困難だったことだけでなく、避難生活のストレスによって糖尿病のコントロールが悪化したと考えられる患者さんがおられ、対策が必要であったことが報告されています。
また、米国糖尿病教育者協会では、7つの糖尿病自己管理行動として食事療法や薬物療法とともにストレスに対して適切なコーピング(心理的ストレスを軽減するよう対処すること)が血糖コントロールに大変重要であることを提唱しています。

では、糖尿病患者の皆さんにとってストレスの原因とはどのようなことがあるでしょうか。
糖尿病に関連した原因として、糖尿病を持つということ、治療に伴うもの、合併症への不安、検査結果への不安や、糖尿病があることによる社会との関係への影響などが考えられます。一般的なこととしては、転職や退職、結婚や離婚、家族の死、介護の問題、家族や職場の人間関係、経済的な問題などが考えられます。
ストレスへの対処としては、問題を明確にして解決法をみつけることによりストレスを軽減する問題焦点対処と、気分転換をして考えないようにする、たいしたことではないと事態を最小化することにより情動的な苦痛やストレスを軽減する情動焦点対処があり、前者は状況がコントロール可能な場合に、後者は状況がコントロール不可能な場合に用いられることが多いようです。

糖尿病患者の皆さんは、糖尿病と診断され治療が開始となってから日々様々な出来事を経験されていると思います。生活習慣を変える必要や、初めて定期的な受診や薬の内服、インスリン注射や自己血糖測定をする方もおられるかもしれません。その一つ一つに多かれ少なかれストレスを感じてらっしゃることと思います。

すみれ病院では、5人糖尿病専門医と10人の糖尿病療養指導士が診療にあたっています。診察に来られる際には、ぜひ日々疑問に思っていることや困っていることをお伝えください。薬の使い方、運動の方法、食事の工夫などちょっとしたことでも、日々のストレスを軽減する提案をさせていただき、より快適に治療を続けていけるようにサポートしていきたいと考えています。

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