糖尿病ケアのための医学知識

内臓脂肪の秘密

医師 小西

前回は内臓の周りに脂肪がたくさんたまって起こる「メタボリックシンドローム」の恐ろしさについてお話しました.今回は,内臓脂肪がなぜ動脈硬化を引き起こすのか,その秘密に迫ります.

体の中の脂肪は脂肪細胞が集まってできています.では,脂肪細胞は体の中で何をしているのかご存知でしょうか?そうです,余ったエネルギーを備蓄する貯蔵庫の役割をしているのです.エネルギーを貯蔵していることは何も悪くはありません.しかし,最近の研究で内臓の脂肪細胞が体に悪いものを分泌していることがわかってきました.もう少し詳しく説明しますと,インスリンの働きを抑え糖尿病になりやすくしたり,血管を収縮させ血圧を上げたり,血栓を作りやすくして動脈硬化を促進させたりするものを作っていることがわかってきたのです.このように脂肪細胞から分泌されるものを「アディポサイトカイン」と呼びますが,脂肪細胞が大きくなり内臓脂肪が増えてきますと,その体に悪いアディポサイトカインの分泌も増えてくるのです.一方,動脈硬化を防ぐ働きのある善玉のアディポサイトカイン(「アディポネクチン」といいます)も脂肪細胞から出てきますが,内臓脂肪が増えてくるとその分泌は減ってきます.

「アディポネクチン」はどのような働きをしているのでしょうか.われわれの血管は,普段から喫煙,血圧,血糖値の上昇,血中脂質,悪玉のアディポサイトカインなどによって少しずつ傷ついています.血液中を流れて全身を巡っている「アディポネクチン」は,血管の傷を見つけるとそれをすばやく修復します.体内のいたるところで起こる「ぼや」を「大火」にしないようにパトロールしている消防士のようですね.

ではどうすれば内臓脂肪を減らし,動脈硬化を防ぐことができるのでしょうか?幸い内臓脂肪はたまりやすいが容易に燃やすことができる脂肪なのです.ですから内臓脂肪を減らすには,ウォーキングなど有酸素運動が大変有効です.また,動脈硬化を防ぐ「アディポネクチン」は豆腐,魚など日本食で増加することが知られています.生活習慣の改善で内蔵脂肪を減らし,「メタボリックシンドローム」を防ぎましょう.

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