糖尿病ケアのための医学知識

感染症と糖尿病

医師 春里

記録的に暑い夏がやっと終わり少し肌寒い日が増えてくると、今年もそろそろインフルエンザの予防接種を開始する季節がやってきました。

2009年に新型インフルエンザが日本で流行し始めた際に、糖尿病患者は妊婦や悪性疾患治療中の患者と同様に感染時に重症化が予想されるため、予防接種の優先接種対象となりました。

糖尿病が存在するとインフルエンザに限らず他の感染症にもかかりやすく重症化しやすいことが知られています。1991年から2000年における糖尿病患者の死因の全国統計によると、感染症は第1位の悪性新生物、第2位の血管障害に次ぐ第3位でした。過去の統計と比較してみると年々増加傾向を認めており、日本人一般の死因と比較しても常に糖尿病患者の方が高頻度であることが報告されています。

糖尿病では、多核白血球、単球、リンパ球の機能が低下しており、感染に暴露したときにこれらの細胞の接着、遊走、貪食、殺菌作用などが低下し、その結果、全般的な免疫能の低下がみられます。また、高血糖による脱水、インスリン不足による糖代謝障害、神経障害、血管障害による血流不全のために組織への栄養と酸素の供給が遮断され、抗菌剤等の治療薬の組織移行も悪化することにより、糖尿病患者の感染症が重症化すると考えられています。

感染症はかかってからの治療も重要と考えられますが、予防はさらに重要です。感染の予防には、手洗いうがいの励行などとともに血糖コントロールを良好に保つことが必要です。そして予防接種も重要な予防となります。米国疾病管理・予防センター(CDC)のガイドラインでは、糖尿病患者に季節性インフルエンザと肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けることを推奨しています。
また、同ガイドラインでは、糖尿病のある人がインフルエンザや肺炎が疑われるような発熱や食事がとれないような体調の不良を認めた場合には、インスリン抵抗性が上昇し血糖値が高くなりやすいため、すぐに主治医に連絡するか医療機関に行くことを勧めています。血糖値が高値になると感染症はさらに重症化しやすくなるため、自己判断でインスリンや薬を中止せず、早めに主治医にご連絡下さい。

すみれ病院でもインフルエンザと肺炎球菌ワクチンの予防接種を行っております。 糖尿病診療につきましては、すみれ病院では平日の午前に加え、月・水・金の夜診と毎週土曜にも外来を行っております。インフルエンザ等で体調を崩された場合は、早期の回復のために次回受診まで待たず、早めの受診もしくはご連絡をよろしくお願いします。

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