糖尿病ケアのための医学知識

高齢者糖尿病患者さんの血糖管理目標

医師 小西

前回は、高齢糖尿病患者さんでは高血糖も低血糖も認知機能低下や転倒のリスクになることをお話しました。

今回は、高齢者糖尿病患者さんにおける血糖コントロールと死亡リスクについて述べ、高齢者糖尿病患者さんの血糖管理はどこを目標にするべきか?について最新の考え方をお話します。

高齢糖尿病患者さん7万人余りの血糖コントロール状態と合併症、死亡の関係をみた研究を示します(図1)。

この研究によると網膜症などの細小血管障害や心血管イベントはHBA1cが7%を越えると増加してきます。一方、死亡はHbA1cが高くても増加しますし、HbA1cが6%以下でも増加するUカーブを描いています。

高齢糖尿病における血糖コントロールと認知症、転倒、合併症、死亡の関係をまとめると図2のようになります。

すなわち高齢者糖尿病患者さんにおいては血糖値(HbA1c値)が高すぎても低すぎても問題が生じることが分かります。

また昨年、米国糖尿病学会と米国老学会が合同で高齢者糖尿病の血糖管理目標についてのコンセンサスレポートを発表しました。これによると、患者さんの状態(健康状態、余命の長さ、認知機能の状態など)により目標とする血糖値(HbA1c値)を個別に設定しています。それに加え、低血糖を出来るだけ起こさないように血糖値に下限を設けています(図3)。

すなわち、高齢者糖尿病患者さんでは、HbA1c値が高すぎても低すぎても注意が必要である。よいコントロールが望ましいが、血糖コントロール目標は個人個人の置かれた状況に応じて考えるべきであり、特に低血糖を起こさないことが重要であるとまとめられます。

次回は、高齢者糖尿病患者さんに具体的にどう対応していくべきかを述べたいと思います。

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