糖尿病療養院指指導士のつぶやき
新しい糖尿病のお薬SGLT2阻害薬とは?
糖尿病療養指導士・薬剤師 安室
こんにちは。糖尿病療養指導士・薬剤師の安室です。
最近、"SGLT2阻害薬"という新しい糖尿病のお薬が発売されました。
糖尿病のお薬には作用の仕方によってさまざまな種類がありますが、いままでは糖の吸収を遅らせたり、インスリンの量を増やしたり、インスリンの作用を高めたりして血糖値を下げるお薬が中心でした。
しかし、新しいお薬は「体内で余っている糖を尿中にどんどん出してしまえば、血糖値が下がる!」という新しい発想のお薬なのです。
今回はそのお薬の作用の仕方についてお話したいと思います。
"SGLT2"とは聞き慣れない言葉ですね。
"SGLT2"とはいったいどんなもので、その新しいお薬がどのように働いて糖を尿中に出すのかを知るために、まず腎臓でどのように尿ができているのかを理解しましょ う。
<尿の作られ方>
1)血液は腎臓に入ると糸球体と呼ばれるところでろ過され、原尿という尿のもとになります。
2)原尿はそのあと尿細管という通り道をとおり、そこで体に必要なものは血液に再吸収されていきます。
3)そして残った不要な老廃物だけが尿になり、体の外に排出されます。
(出典:アステラス製薬「スーグラ®錠25mg、50mgを服用される患者さんへ」)
腎臓では、体の中の不要なものを尿として外に排出しています。
ブドウ糖はというと、不要なものではなく、体に必要な栄養分です。
そのため糸球体でろ過されたあと、尿細管でほぼすべて再吸収されるようになっています。
そして、そのブドウ糖を再吸収する役割を担っているものこそが"SGLT2"です。
つまり、その"SGLT2"の働きを阻害することで、ブドウ糖の再吸収をブロックし、過剰なブドウ糖を尿に排出させて血糖値を下げるというの が"SGLT2阻害薬"というお薬なのです。
SGLT2阻害薬のメリットとしては
○インスリンを介さない作用のため、膵臓に負担をかけずに血糖値を下げられる
○体重の減少効果がある
○単独では低血糖の心配が少ない
というようなことが言われています。
ただし、注意しないといけないこともあります。
それはこのお薬には尿量を増やす作用があり、トイレの回数が増えたり、のどが渇きやすくなったりします。
そのため脱水にならないよう、こまめな水分補給を心掛ける必要があります。
また、糖は細菌の栄養になるため、尿路感染症や性器感染症にも注意しないといけません。
そのため、トイレをがまんしないようにしたり、ウォシュレットや入浴するなど清潔を保つようにしてください。
このお薬に限りませんが、副作用を予防するためには、お薬のことをよく理解いただいた上での服用が大切です。
自分が飲んでいる薬について、どういった作用で、どういった注意が必要かを知っておいてくださいね。