糖尿病ケアのための医学知識

高齢者糖尿病の治療

医師 小西

こんにちは,すみれ病院の小西です.

最近,高齢者の糖尿病患者さんをどのように治療していくかが問題になっています.
というのも,高齢の患者さんが増加していることがもちろん問題なのですが,家族のサポートや社会的サポートが得られない方や,認知症を持った方,いわゆる虚弱な高齢者の方が増えているためです.実際にすみれ病院に通院中の糖尿病患者さんの約半数が65歳以上です.我々も,高齢の患者さんをどのように治療していくべきか日々悩みながら診療を行っているのです(表1).


今回から数回にわたり,高齢の方の糖尿病治療についての最新情報をお届けします.

まず知っていただきたいことは,高齢者糖尿病の治療方針は若い方と違うということです.高齢者糖尿病治療において考えるべきポイントは次の4点です(表2).

高齢者でも糖尿病治療において合併症(脳梗塞,心筋梗塞などの動脈硬化性疾患や細小血管障害)の予防が最も重要であることは言うまでもありません.特に高齢者糖尿病では脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリスクは無症候性のものも含めると2~5倍になるといわれています.脳卒中が起こると,麻痺によるADL(日常生活動作)の低下,嚥下障害やそれに伴う肺炎,認知症,うつ,廃用症候群,低栄養などにつながり予後が悪化します.したがって,高齢者糖尿病では脳卒中の予防が大切です.脳卒中,心筋梗塞を防ぐためには血糖の管理のみならず,血圧や脂質(コレステロールや中性脂肪)の管理が大事になります.

さらに高齢者においては,糖尿病の治療に伴う低血糖,特に重症低血糖の予防が重要になります.重症低血糖は認知症,転倒や骨折,さらには死亡のリスクになると考えられているからです.しかも高齢者は若い方と比べて低血糖の自覚症状に乏しい傾向があるため低血糖が見逃されることがあり注意が必要です.

次に,高齢の患者さんでは加齢とともにさまざまな治療や介護が必要な身体的・精神的症状が出現します.これを老年症候群といいます.糖尿病があると老年症候群の頻度が2~3倍多くなるといわれています.老年症候群は身体の様々な機能低下をもたらし死亡率の増加につながるので,糖尿病を持つ高齢者においては,その対策がより大事になります(図).

そして,糖尿病は自己管理の病気といわれますが,高齢の患者さんは必ずしも自己管理がうまくいかない方も多くいらっしゃいます.したがって,家族や社会のサポートが必要になります.しかし,必ずしもすべての患者さんに十なサポートが提供できているといえないのが現状です.サポート不足をどのように補っていくかを考えることが大事です.

今回は,高齢者糖尿病の治療のポイントについてお話しました.次回は,なぜ高齢者で低血糖に注意すべきなのか?低血糖と認知症,転倒との関係についてお話します.

すみれ病院では,高齢者糖尿病診療にも力を注いでいます.患者さんご自身はもちろん,ご家族の方もお困りのことがあればご相談ください.専門医と糖尿病療養指導士がしっかりサポートします.

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