糖尿病ケアのための医学知識
糖尿病と癌,この密接な関係
医師 小西
皆さんこんにちは.すみれ病院の小西です.
今回は,9月20日に当院で行った糖尿病講座「かしこい病院へのかかり方」でも話題にした「糖尿病と癌の密接な関係」についてお話ししたいと思います.
ご承知のとおり糖尿病は増加の一途をたどっています.糖尿病という病気は,それ自体自覚症状がないのですが放置すると,脳卒中,心臓病などの動脈硬化,網膜症による失明,腎臓病による透析など重大な合併症の原因となります.
2010年に米国で,糖尿病は癌の発症と関係があると報告されました.日本でも,日本糖尿病学会と日本癌学会が行った調査で,糖尿病があると癌にかかりやすくなることがわかりました.つまり,癌も糖尿病の大事な合併症の一つと考えられるのです.
この報告によりますと,糖尿病の人は糖尿病のない人と比べて癌のリスクが2割高くなっていました.特に,膵臓癌や肝臓癌では2倍,大腸癌では1.4倍です.一方,乳癌や前立腺癌では糖尿病との関係は認められませんでした(図).
では,なぜ糖尿病で癌が増えるのでしょうか?糖尿病があると癌にかかりやすくなる理由は完全にわかっているわけではありません.
主要な理由の一つは,糖尿病と切っても切れない関係にあるインスリンに関係していると考えられています.血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが不足すると,それを補うために血中のインスリンの濃度が高くなったり(高インスリン血症),IGF-1(インスリン様成長因子-1)の増加が起こります.インスリンやIGF-1には,細胞の増殖を促す作用があるので糖尿病では発癌のリスクが高くなると考えられています。肥満や運動不足でも,多くの場合は高インスリン血症が引き起こされますので,肥満や運動不足と関連の強い癌では,同様のメカニズムが考えられています.
「糖尿病と癌に関する提言」が日本糖尿病学会と日本癌学会から出されています(表).
癌の予防のためにも,やはり食事療法,運動療法を基本にした血糖コントロールが大事なのですね.
そして,糖尿病の治療のために通院することはもちろんのこと,癌検診も忘れずに受けることが大事ですね(表).
すみれ病院では,癌検診や癌を早期に発見する診療も行っていますのでご相談ください.